クリスマス・・・

サンタクロースが居るって信じていたのは・・・
いったい幾つのころまでだったんだろう

枕元に、緑のリボンがかかったプレゼントを見つけて、嬉しかったガキのころの俺・・・

でも、サンタクロースは本当に欲しいプレゼントをくれるわけじゃない
そう分かってからは、リボンを解くことをしなくなった

それから10余年・・・
今度のクリスマスは・・・どんな一日になるのだろうか


数学の授業はつまらない
窓から差し込む柔らかな冬の日差しをうけて、の髪が光るのを俺はみていた


「で、あるからして・・・」

教科書は開ける気にもならなくて、そのまま閉じたままの俺
もうすぐ期末テストらしいけど、また数学は寝て過ごすだろうか・・・


「それでは、これから小テストを行うこととする」

先生の言葉に教室が一斉にざわめいた
小テスト・・・って言っても期末前の模試みたいなもんだろう
意識の半分を支配している眠気を追い出すように、俺は大きなあくびをした
そうしたら、ちょうどタイミングを計ったように・・が振り返った





淡々と進んでいく授業風景。
「あの人と同じ大学に行きたい。」
そう思っている私は、彼と同じ大学を受験するにはもう少し
頑張らないといけない状況で。
特に苦手科目の数学の授業は、先生の説明が少し判りづらくても
何とか理解しなければ、と少し焦っている時間。

不意に先生が
「それでは、これから小テストを行うこととする。」
と、言いながらテスト用紙を配り始めた。

授業中は寝ていることの多い彼。
もしかしたらまた寝ているかもしれないと思った私は
寝ているかどうかを確かめる為に、ゆっくりと後ろを見た。

まさか起きているなんて思わなくて、綺麗な綺麗な彼の翠色の
瞳と眼が合ってしまった。

びっくりしてしまってすぐには言葉が出ない。
「あ、あ、あのね、先生がテストだって。で、もしかしたら気が付いてないのかなと思って。ごめんね、おせっかいで。」

それだけ言うと、彼の反応も待たず、思いっきり前を向いた。
ようやく出た、とても言い訳がましい台詞。
どうしてもっと上手に話せないんだろう。
もうテストどころではなくて、その日の小テストは
散々だった。   






振り返った途端俺と目が合ったは・・・
大きな瞳をぱっと見開き、思いのほか驚いた顔をしていた

いつもみたいな笑顔じゃなかったのは何故だろう・・

そんなことをふと考えたけれど、答案用紙を配るためにもう一度振り向いた表情を見たときに、少し分かった

数学・・・得意じゃないからな・・・

テストが始まって数分・・・
のシャープペンシルの音は、不規則で
時々止まっては・・・消しゴムを使う右手が激しく動いた
公式を間違えて全部書き直しているんだろうか
上がり下がりする頭を見ながら・・・俺は気になって仕方なかった

机の間を見回っている先生が、俺の答案をちらりと見やると
無造作にそれをつかみあげた
眼鏡越しに一瞥するとすると、何も言わずに回答のない答案を戻した

仕方ない・・・一応書いておくか

俺はの背中を見るのをやめて、目の前の数式に意識を集中した
教室の中は・・・しんと静まり返り
校庭からかすかに聞こえてくる笛の音だけが・・・やけに耳に残った





二日後・・・



「う〜っ、私ったらドジっ!なんで教科書忘れるのよ〜。」
一人で突っ込みながら廊下をパタパタと走る。

一昨日の小テストが散々だった為、復習と言う名目で宿題を増やされた私は、バイトも休みだし、早めに帰って宿題をしようと玄関で靴を履き替えた。
そして、手に持っていた増やされた分の宿題のプリントを鞄に入れようとして、ようやく教科書を忘れた事に気が付いた。

私は先生の説明を教科書に書きこむクセがある。
教科書とノート、両方ないと授業の内容が半分しか思い出せない。
教科書を忘れると宿題をこなすのに物凄く支障があるわけで、取りに戻らないわけに行かなかった。

焦りながら、教室の扉を開く為に思いっきり力を入れ…
たつもりが、私が力を入れたと同時にすっと開いた。
自分の動作を制御できずに勢いが付いたまま教室に飛び込むように
なった私は、瞬間的に(転ぶっ!)と思った。

来るであろう衝撃を予想して、身を縮ませて眼を瞑る。
けれど私を包んだのは思っていたような衝撃ではなくて
抱きしめるように受けとめてくれた優しい腕と
よく知っているひとの香りで…。


恐る恐る眼を開けると、そこには少し驚いた、けれど綺麗な
翠色の瞳が私を見つめていた。





6時限の世界史をすっかり寝て過ごした俺が目を覚ましたとき
教室には、もう誰もいなかった
俺の日常でこの「風景」は当たり前のもので・・・
薄いカバンを持つと・・・立ち上がって教室の前扉へ向かう

まだ半分眠っている頭を二度振って・・・扉を出ようとしたところで
教室へ飛び込んできた「何か」とぶつかって・・・俺はその物体を抱きとめた

ドアを開けた瞬間に勢いよく突進してきた「物体」が

「わぁっ!」

っと派手な叫び声をあげ、頭からダイレクトに胸に飛び込んでくると
その拍子に真っ白い紙が数枚ひらひらと宙をまった

擬音を使うならば「がしっ」っと言うのが適切だっただろう
その物体は俺にがっちりと抱きついてきた

時間にしてほんの数秒・・・
けれど俺にとっては、戸惑いの長い時間
でも・・・腕の中で顔をあげたのは、俺の一番見たいの顔だった


「あゎゎっーっと、は、は、葉月くん!」
「ん・・・俺」
「こ、こんなところで、な、なにしてるの?」

「こんなところでって・・・一応俺にとっても自分の教室だから」
「あ・・・そ、そうだよね」
「ん・・・俺は帰るところ、は?」

自分のおかれた状況が飲み込めないで居た
俺の言葉に「はっ」っと我に返ったみたいで、見る見るうちに頬を赤く染めた
それでも何故か俺の背に回した腕は解かずに


「わ、私は、きょ、教科書忘れちゃったんだった」
「あのな・・・」
「え?」

「そんなに慌てないでいいからゆっくりしゃべれよ・・・
 それと、俺は逃げやしないから・・・」
「逃げないって、何が?」

キョトンとして俺を見上げるの身体を・・・
このまま抱きしめてしまいたいけれど
そんな感情を気取られてはいけない・・・
だから俺は・・・自分の背中に回った腕を指差した


「ん?あーーっ!」

これまた派手に叫んだは、腕をはずし今度は後ろに1mほど後ずさって


「ご、ごめんね!」

そういって肩をすくめ文字通り小さくなった


「別に・・構わない・・・それより、教科書忘れたんだろ?
 また忘れないうちに取ってきたほうがいい」
「あ、そうだった、また忘れるところだった、あ、ありがと!」

が自分の机に戻っている間
教壇の前にまで散らばってしまった白い紙を拾い集めた

それには、びっちりと数学の問題が書かれている
見覚えのないそのプリントは、俺の寝ている間に配られたのだろうか・・・


「なあ・・・このプリント・・・」
「あ、これはこの間のテストの復習問題なの」
「復習問題?俺は貰ってないけど・・・いつ配られたんだ?」
「んとね、葉月くん、一昨日のテスト何点だった?」
「一昨日の・・・って」

俺は薄いカバンからテストらしきプリントを探した
使わないノート、ほとんど開けない教科書
あちこち探して見つかった紙には100点と書いてある


「これか?」
「あ・・・、100点」
「ん?」
「葉月くんにはこのプリントは配られてないから心配しなくていいよ」
「・・ってことは、は・・・いまいちだったのか?」

俺の問いかけに、はがっくりと肩を落とし力なくうなずいた


「数学って、苦手なんだよね
 この復習も相当頑張らないと出来ないかもしれないよ・・・」
「・・・」

俺は・・・手元にある数学の問題をじっくり眺めた
決して難しいものではない・・・と思う


「分からないなら、教えてやる・・」




い、いま。
葉月くんが私に勉強を教えてくれるって言ったんだよね?


「ホ、ホントに!?」

思わぬ申し出に、一瞬 遠慮もなにも忘れて葉月くんの腕にしがみついてしまった。


「……お前、隣のウチで飼っている犬みたいだ
 今、ぶんぶん尻尾ふってるのが見えた、俺」

ハッとした時にはもう時すでに遅し。
葉月くんは口に大きな手をあてて肩まで震わせて笑っている。
あ〜〜〜。

だって!
ちょっと図々しかったかもだけど、学年一位の葉月くんに教えてもらえるなんて、こんなチャンスめったにないし!
それにそれに……葉月くんと2人きりになれちゃうかもしれないんだし。

尻尾なんてないもん、と反論しつつ恐る恐るもう一度聞いてみる。


「勉強、迷惑じゃなければお願いしてもいいかなぁ?」
そっと見上げると、葉月くんは少し口角をあげて目元をゆるめて
「迷惑だったら、言わない」と答えてくれた。

近頃やっと「笑ってくれてるんだ」って分かるようになった、かすかなーでも綺麗で優しい笑顔。
ああ、葉月くんは本当にキレイな人だなあ。
なんだか胸がジンとしてしまう。

そして、その微笑のまま葉月くんがさらりと言った。


「じゃあ、これから俺の家、来るか?」





数学を教えてやるって、何気なく口にした俺だったけれど・・・
俺が予想していた以上に・・・目の前で喜んでくれたがいた

もしかして、相当数学が苦手なんだろうか

なんてこともちらりと思ったけれど、それ以上に一緒にいられる時間が持てることが俺は嬉しく感じて・・・思わず

『家に来るか』

って言ってしまったんだ

学校の図書館でって・・・普段の俺ならそう思う
実際に図書館では数回一緒に勉強したこともある
でも、家へ招待するというのは・・・初めてだった

目の前のは、一瞬パチパチっと瞬きした
驚きの表情・・・でも次の瞬間笑顔で「うん!」そう言った



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